小児と薬情報収集ネットワーク整備事業について
背景
小児医薬品の開発は、新生児から青年期までの多様で幅広い患者を対象とすることから、医薬品の用量や剤形等、各年代に応じたきめ細やかな対応が要求され、安全性及び有効性の評価も難しく、また臨床試験の計画や同意取得等に小児特有の配慮が必要となります。
このような要求は製薬企業にとって小児医薬品の開発を積極的に実施することへの高い障壁になっています。そして、小児医薬品の臨床試験実施が困難であるため、小児医薬品の有効性及び安全性に関する十分なデータが得られないことから、結果として小児の用法や用量が設定されず、添付文書にも明記されないことが少なくありません。そのような状況下であっても医療現場では医療従事者が必要に応じて、小児用量が添付文書に明確に記載されていない医薬品の投与量を減らしたり、剤形を変更したりするなどして使用していますが、それらの使用実態に関する情報が十分に集積されていないことも課題です。
今後も医療業界のイノベーションにより数多くの新薬が開発されると予想されますが、小児に対しても安心かつ安全に医薬品等を使用できる環境を整えることが求められています。
概要
平成24(2012)年度より厚生労働省の補助事業としてスタートした「小児と薬情報収集ネットワーク整備事業」では、「小児医療情報収集システム事務局」が国立成育医療研究センターに設置されました。小児医療情報収集システム事務局は、全国の小児医療機関等からなる小児医療機関ネットワークを活用して、電子カルテと問診システムをデータ源とした「小児医療情報収集システム」を開発し、小児医薬品の有害事象情報や投与量情報などを医療情報データベースへ収集及び解析、評価する体制を整備しました。
目的
小児医療情報収集システムの医療情報データベースに集積したデータを利活用し、小児に対する医薬品の投与量、投与方法等の使用実態と有害事象等の発現状況等の医薬品の安全性に関する情報を解析、評価することにより、小児用医薬品の安全対策のさらなる向上及び小児用医薬品の開発推進に貢献し、子どもたちへより安心、安全な医薬品を提供することを目的としています。