1. 小児DBについて
小児DBとは、平成24年から厚生労働省からの補助事業として、成育医療研究センターが実施している小児と薬情報収集ネットワーク整備事業(以下、「本事業」という)により整備された小児医療情報収集システム内に構築した医療情報データベースです。また、小児医療情報収集システムとは、本事業に協力いただいている小児医療施設等(以下、「協力医療機関」という)から電子カルテ情報および患者(代諾者を含める。以下同様)から聴取した問診情報を組み合わせることで、より精度の高い情報を収集するシステムです。具体的には、協力医療機関の電子カルテシステムからSS-MIX仕様(Standardized Structured Medical record Information eXchange)にて医療情報(病名情報、処方・注射実施情報、検体検査結果情報等)を集約させるSS-MIXサーバと、当該情報から患者の個人情報を削除し、暗号化する機能をもつゲートウェイサーバ、患者状態や症状・徴候(いわゆる問診情報)を収集する高度品質診療(問診)情報収集システム、および両者のデータを統合し、検索・分析可能な情報として管理する小児DBから構成されています。
なお、以下、医療情報と問診情報をあわせて医療情報等と呼称します。
(1) 小児DBの目的と意義
小児医薬品の開発は、新生児から青年期までの多様で幅広い患者を対象とすることから、医薬品の用量や剤形等、各年代に応じたきめ細やかな対応が要求され、安全性及び有効性の評価も難しく、また臨床試験の計画や同意取得等に小児特有の配慮が要求されます。このような要求は製薬企業にとって小児医薬品の開発を積極的に実施することへの高い障壁になっています。そして、小児医薬品の臨床試験実施が困難であるため、小児医薬品の有効性及び安全性に関する十分なデータが得られないことから、結果として小児の用法や用量が設定されず、添付文書にも明記されないことが少なくありません。そのような状況下であっても医療現場では医療従事者が必要に応じて、小児用量が添付文書に明確に記載されていない医薬品の投与量を減らしたり、剤形を変更したりするなどして使用しています。
本事業では、協力医療機関から医薬品を投与した際の有害事象情報や投与量情報などを収集、解析、評価する体制を整備することにより、小児用医薬品の安全対策のさらなる向上及び小児用医薬品の開発推進に貢献することを目的としています。
(2) 小児DBの利活用の概略
小児DBでは、2015年7月から協力医療機関の医療情報及び問診情報を収集(格納)しています。これらの情報は機微なものであり、その情報の取り扱いには十分な配慮が必要と考えています。
現時点における小児DBの利活用は、「試行的利活用」として、以下の目的の範囲内であり、小児医療の向上に資する調査・研究であることとします。
① 小児における医薬品の投与実態(投与量、投与方法、有害事象の発現状況)及び安全性並びに有効性に関する調査・研究
② アカデミア、行政機関等が実施する公益性の高い調査・研究
また、小児DBの利活用可否については、公衆衛生上の観点で緊急を要する場合など一部の例外を除き原則として、独立した第三者の有識者で構成される有識者会議の意見を聴いたうえで判断します。 さらに、小児DBを利活用して得られた結果は、公益性の観点から原則として公表することとしています。その際には、個人が特定されるおそれなどがないような措置を施し、かつ公表基準に基づいて公表の可否を判断します。なお、その判断に当たっては、有識者会議の意見を聴くこととしています。
(3) 小児DBにおける情報の取り扱い
小児DBに収集(格納)されている医療情報等については、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(平成26 年12月22日、文部科学省・厚生労働省告示第3号)に基づき、成育医療研究センターの倫理審査委員会から承認を得た「小児医療情報収集システムを用いた医療情報等の利活用に関する研究」(以下、「小児DB利活用研究」という) の研究計画書に従って収集され、かつ小児医療情報収集システムにおける医療情報等の利活用要綱(以下、「本要綱」という)に則って利活用するものとしています。
小児DBに保存される情報には、患者情報、医療情報、問診情報の3つの情報があります。
①患者情報 | ②医療情報 | ③問診情報 |
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※:ユニークID:患者IDをRSA暗号方式により変換・置換したID
協力医療機関は、個人の秘密保護に十分配慮し、医療情報等を匿名化(どの研究対象者の試料・情報であるかが直ちに判別できないよう、加工又は管理されている)し、小児DBへ送信しています。小児DBでは、協力医療機関から患者氏名・住所・郵便番号・電話番号の個人情報は送信されず、送信される患者情報はユニークID、性別、年齢情報(年齢若しくは生年月日)であり、患者ID番号を保有しません。なお、小児DBを利活用して得られた結果を公表する際は、本人の個人情報を保護したうえで公表します。
2. 個人情報の保護に関する考え方
協力医療機関は、上記の通り匿名化した本人の医療情報等が利活用されることを公表し、自身の医療情報が送信され、かつ利活用されることを本人(又は代諾者)が拒否する機会を保証します。併せて成育医療研究センターは、利活用に関する情報公開を行います。協力医療機関は、本人(又は代諾者)から医療情報の送信について拒否する申出があった場合には、拒否の申出後、原則として申出のあった翌日以降の医療情報を小児DBに送信しません。なお、成育医療研究センターは、個々の患者さんを識別できる対応表を作成しないことから個人を特定することが困難であり、医療情報の送信について拒否する前に既に送信された医療情報及びそれら医療情報等から生成された統計情報については破棄しません。
3. 承認された利活用に関する情報
小児DBを利活用することによって得られた成果は、小児DBの利活用目的の公益性という観点から、原則として公表するものとします。
公表に当たっては、他の情報と照合すること等により特定の個人が識別されるおそれがある状態で公表しないことを原則とします。この取り扱いを担保するため、利活用者は事前に公表予定の資料を事務局へ申請し、公表の許可を得なければなりません。
公表基準:以下に掲げる①から③のすべてを満たすこと。
① 承認された利活用目的と合致したものであること
② 患者等の数について、原則として、3未満(0を除く)となる集計単位が含まれていないこと(3未満(0を除く)の場合、有識者会議の意見を聴取して判断する)
③得られた成果のデータソースとなった各協力医療機関の具体的名称が記載されていないこと